母の万歩計
母は万歩計が好きだ。
好きだけれども持っていない。
ちょっと前までは絶対に家にあったのだから、どうして今ないのか全く理解できないが、とにかく現状万歩計がないので、今母はとてもそれを欲しがっている。
母は、散歩が好きな口である。
もともと恐ろしく地理に強いので、一度歩いた道筋は決して忘れない。
自分が住んでいる地域から遠く離れたところでも、だ。
どういう脳の構造になっているのか検討はつかないが、とにかく一度通ったところは地図になって頭に残るらしい。
まったく稀有な人である。
とにかく散歩が大好きな母は、関係ないが数字も好きな口である。
数学や算数がとても好きだし、私が小学生の頃は一緒になって宿題の100マス計算をやっていた。
目を輝かせて。
そんな人によくあるように、母も何事も数字で表されるのが好きなようである。
今日は何歩歩いたから何キロカロリー消費した、とかそんな類の話も好きなのである。
だからこそ、万歩計のように全ての小情報が提示されるものはよいらしい。
最近のは小型の癖に機能性抜群で、心拍数とか時計とか、色々と教えてくれるようになっているらしい。
よくあるテレビショッピングのような通販番組や、通販カタログで高機能万歩計を見ると、これまた目を輝かせながら「いいわねえ」と嘆息している。
大して高くもないものなのだから、買えばいいのにと思うが、なかなか買おうとしないのがまた不思議である。
これから気候もよくなるし、健康促進の為にプレゼントしてあげようか。
お中元を贈る贈ると言って贈らないまま今日に至った不孝娘は、きっとすぐにお歳暮のシーズンを迎えてしまうだろう。
このタイミングでお中元兼お歳暮という体にしてもらおうかと思う。